調布市役所の無料相談や東京税理士会武蔵府中支部の無料相談会で相続のご相談を受けた際に思ったことは、ほとんどの故人(=被相続人)は相続生前準備をされていないのではないか、ということです。
相続生前準備と聞くと、遺言書の作成・相続税の税金対策(節税)といった財産を多くお持ちの方が行うものを連想されるかもしれません。しかしながら、ここで言っている相続生前準備は、そのような大袈裟なものではなく、(ひょっとすると納税が発生するかもしれないというレベルまでの)一般人向けの生前準備です。
相続を経験されたことのある方ならわかると思いますが、相続は、納税がなかったとしても大変です。相続をすすめていくうちに、故人に対して「あのとき聞いておけばよかった」と思った方は、たくさんいるのではないでしょうか。以下の項目を書いておくだけでだけで、残された人たちは、劇的に楽になります。
本籍地がどこにあったのか
預金の凍結解除などの際に必要となるため、ほとんどの方は、故人(=被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を集めます。戸籍の本籍移動を頻繁にしている方の場合、ご子息はこの戸籍謄本集めに非常に苦労します。(ご子息は故人本人ではないのですから、苦労するのは当然です。)生前の段階で出生から現在までの本籍の移動状況を書き出しておいてあげてください。(相続税の申告をする際にも、戸籍謄本は使用します。)
申告書の資料はどこにあるのか
故人(=被相続人)が毎年所得税の確定申告をしていた場合、相続人は、故人(=被相続人)の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、故人(=被相続人)の所轄税務署へ相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。そのため、申告に必要な医療費の領収書を普段どこに置いているか・過去の申告書がどこに置いてあるかなどを明確にしておいてください。(所得税・消費税のほかに過去の贈与税・相続時精算課税の書類も明確にしてあるとよいです。)
財産目録の作成
これは非常に重要な作業なのですが、ほとんどの方がやられていないのではないでしょうか。作成する際には、借入金などのマイナスの財産も記載し、仮に他人にみられても問題ない形で記入してください。あくまで、相続人に存在を伝えられる範囲の情報を記載します。銀行口座の暗証番号やクレジットカード番号を全て記入してはいけません。
預貯金
・銀行名や口座番号、ネットバンキング用のIDなど
・公共料金やクレジットカードなどの自動引き落としの情報
資産
・有価証券やその他の金融資産
・不動産に関すること
・貴金属、宝石類(鑑定書の有無)、美術品、着物及び骨董品などの資産価値があるもの
・貸金庫やトランクルームなどの有無
・貸しているお金
借入金・ローン
・借入先名や返済方法、担保の有無など
・借金の保証人などの保証債務
クレジットカード
・カード名称やカード番号の一部
・電子マネーやポイントカード
年金
・基礎年金番号や加入した年金の種類などの公的年金に関すること
・企業年金や個人年金などの私的年金に関すること
・年金の加入履歴を確認するための学歴や職歴一覧
保険
・加入している保険会社名と種類、商品名