平成29年4月1日現在法令等に基づき記載しています。
業者から不動産などを購入する場合には対価の金額が明確になっていますので問題になりませんが、兄が所有している不動産を弟が購入するといった個人間売買(親族間売買)の場合、その対価の金額が問題となります。
税務署が想定する対価
税務署が想定している個人間売買の対価の額は、時価です。ここでいう時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。
時価はどのように計算するのか
税務署が想定している時価は、通常の取引価額に相当する金額や相続税評価額ですから、誰が計算しても同じ金額になるというものではありません。(その値段に幅があると考えていただけるとわかりやすいと思います。)
土地の価格を例にすると、実勢価格、公示価格や基準地価、相続税評価額(相続税路線価)、固定資産税評価額(固定資産税路線価)及び鑑定評価額の6つの金額があります。これらの金額は、あくまでの指標にすぎず、個人間売買でどの評価額を使えば一番適正かどうかということはできません。ただし、税務調査の際に、「この金額を基準として時価を算定しました。」と根拠を示せるため、調べておく必要があります。
実勢価格
実勢価格は、実際の市場取引から形成される時価や相場と言われる価格で随時変動する価格です。近隣の最近取引事例を複数集めてみると、特別な事情がなければ、ある一定範囲の価格帯で取引されているのが分かります。例えば、同じ道路に接している隣り合った土地が、㎡あたりの単価で数万円も違うようなことはめったに起こらず、同じ広さなら同じような価格で取引されています。それらを集めたものが実勢価格と思っていただければよいと思います。他の価格もそうですが、それぞれの価格にはメリット・デメリットがあります。簡記すると以下のとおりです。
メリット:取引事例から得られる価格で実状に近い
デメリット:地域の取引数が少ない場合や類似物件がないと精度が低い
実勢価格を知る方法は、3つあります。
・国土交通省が開示している土地情報総合システムを使う方法
http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
・近隣における売買実例価格を仲介業者から教えてもらい参考にする方法
・仲介業者に査定してもらう方法
公示価格・基準地価
公示価格は、国土交通省が、全国の地点につき不動産鑑定士に評価依頼し、毎年1月1日時点の価格を毎年3月に公表するものです。
・国土交通省地価公示・都道府県地価調査
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
基準地価は、都道府県知事が、不動産鑑定士に評価依頼し、毎年7月1日時点の価格を毎年9月に公表するものです。
・東京都基準地価格
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/kijunchi/index.html
メリット:市場取引でも参考にされる価格で公的指標として信頼できる
デメリット:定められた地点の価格なので近隣では補正が必要
相続税評価額(相続税路線価)
路線価は、国税庁が、財産評価の基準として用いる路線価図・評価倍率表を、毎年1月1日時点の価格を毎年7月に公表するものです。おおよそ公示価格の80%を目安に設定されるため、0.8で割り返して時価を逆算する必要があります。
・路線価図・評価倍率表
メリット:公表された路線価等から簡易に知ることができる
デメリット:相続税額の算出用であって時価 ではない
固定資産税評価額(固定資産税路線価)
固定資産税評価額は、市町村長が、総務大臣が定める固定資産評価基準により、土地と家屋所有者に固定資産税等を徴収する目的で設定するものです。おおよそ土地は70%程度を目安に設定されるため、0.7で割り返して時価を逆算する必要があります。
メリット:課税明細書で正確に、公表された路線価等から簡易に知ることができる。
デメリット:固定資産税額の算出用であって時価ではない
鑑定評価額
鑑定評価額は、不動産鑑定士(不動産鑑定評価を行う国家資格者)によって、価格の算定評価をしてもらった価格です。(鑑定評価を依頼すると数十万円程度の報酬が発生します。)
メリット:不動産鑑定士が誤らない限り客観的な土地の価格として有用
デメリット:実勢価格とは乖離することがあり費用がかかる
参考:一般財団法人資産評価システム研究センターが、固定資産税路線価等・相続税路線価等・地価公示価格・都道府県地価調査価格の4つを開示しています。
・全国地価マップ